社内ハラスメント調査(アンケート)の進め方と設問の作り方
職場のハラスメントを防ぐには、まず社内で何が起きているのかを知る必要があります。この記事では、社内でハラスメントの実態を調べるアンケートについて、目的の決め方から設問の作り方、結果の活かし方までを順に説明します。
社内調査が必要な理由
厚生労働省の委託調査「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間に勤務先でパワハラを受けたと答えた労働者は19.3%でした。顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)は10.8%、セクハラは6.3%で、パワハラの割合が最も高くなっています。
一方で、ハラスメントを受けても社内の窓口に相談しない人は少なくありません。相談件数が少ないことは、ハラスメントが起きていないことを意味しません。相談を待つだけでなく、会社のほうから状況を確かめに行く手段として、社内アンケートが役立ちます。
パワハラ防止法では、相談に応じる体制の整備などが企業に義務づけられています。アンケートそのものは義務ではありませんが、方針の周知や研修の内容を決めるときの根拠になります。
調査の前に決めておくこと
目的
目的によって、聞くべきことが変わります。よくある目的は次の3つです。
- 社内全体でどのくらいハラスメントが起きているかを把握する
- 相談窓口や研修など、今の対策が機能しているかを確かめる
- 起きている事案を早く見つけて、対応につなげる
3つ目を目的に含める場合は、回答から事案が見つかったときに誰がどう対応するかを、事前に決めておいてください。調べたのに対応しないと、社員の会社への信頼が大きく下がります。
匿名にするかどうか
匿名にすると、率直な回答が集まりやすくなります。その代わり、個別の事案に対応することは難しくなります。記名式にすると対応はしやすくなりますが、報復や人間関係の悪化を心配して、事実を書かない人が増えます。
実態の把握が目的なら匿名式、個別の対応が目的なら「回答とは別に相談窓口を案内する」という組み合わせが現実的です。匿名の場合でも、所属部署や年代まで聞くと、人数の少ない部署では個人が特定されてしまうことがあります。集計の単位は一定の人数以上にするなど、特定されない工夫が必要です。
回答結果を誰が見るか
回答を見られる人の範囲と、回答の保管方法を決めて、調査の案内に明記します。管理職が部下の回答を見られる仕組みでは、正直な回答は集まりません。外部の調査サービスを使うのも一つの方法です。
設問の作り方
設問は多すぎると回答の質が下がります。10分程度で答えられる量を目安にしてください。主な設問の例を挙げます。
| 知りたいこと | 設問の例 |
|---|---|
| 被害の経験 | 過去1年間に、職場で次のような行為を受けたことがありますか(行為の例を複数挙げて選択式にする) |
| 行為者との関係 | その行為をしたのは誰ですか(上司/同僚/部下/取引先・顧客 など) |
| 見聞きした経験 | ほかの人がそのような行為を受けているのを見聞きしたことがありますか |
| 相談の状況 | そのことを誰かに相談しましたか。相談しなかった場合、その理由は何ですか |
| 対策の認知 | 会社のハラスメントに関する方針や、相談窓口を知っていますか |
| 職場の雰囲気 | 職場で、困ったことを上司や同僚に相談しやすいと感じますか |
「パワハラを受けたことがありますか」とだけ聞くと、パワハラの受け止め方が人によって違うため、回答がばらつきます。「人前で大声で叱責された」「必要な情報を自分だけ知らされなかった」のように、具体的な行為で聞くほうが実態をつかめます。行為の例は、厚生労働省の指針が示すパワハラの6類型を参考にすると漏れが少なくなります。
実施するときの注意点
- 調査の目的、匿名性、回答を見る人、結果の使い方を、案内の最初に書く
- 回答期間は1〜2週間程度とし、途中で一度リマインドを送る
- 回答画面の最後に、相談窓口の連絡先を載せる
- 調査をきっかけに相談があった場合の対応手順を、担当者間で共有しておく
結果を活かす
集計が終わったら、全体の傾向を社員に共有します。すべての数字を出す必要はありませんが、「調査の結果、こういう課題がわかったので、こういう対策を始める」と伝えることで、次回以降の回答率と信頼が上がります。
部署ごとに結果の差が大きい場合は、管理職向けの研修や個別の面談を検討します。同じ設問で定期的に調査を続けると、対策の効果を比べられます。
アンケートとあわせて行いたいこと
社員アンケートでわかるのは、主に被害を受けた側から見た職場の状況です。一方、パワハラの多くは、行為者が自分の言動を問題だと思っていないところから起きます。管理職自身に自分の指導や考え方を振り返ってもらう自己診断を組み合わせると、被害が起きる前の段階で手を打ちやすくなります。